PLAとは?SMOOOTHがPLAフィラメントを開発する理由
PLA(ポリ乳酸)は環境に優しいプラスチック
PLA(ポリ乳酸、Poly-Lactic Acid)は、トウモロコシやジャガイモからできたバイオマスプラスチックです。
19世紀初めに研究が始まり、実用化されてからはまだ20年ほどの比較的新しい樹脂になります。
PLAは石油資源に依存せず再生可能な農作物から作ることができ、それゆえ燃やしても大気中のCO2を循環利用すること(カーボンニュートラル)になります。
また、生分解性という特性を持っており、自然環境の土で分解が可能です。
このような特徴から環境に優しいプラスチックとして注目されています。
※バイオマスプラスチック…バイオマス(植物由来の原料)から製造されるプラスチック
カーボンニュートラルとは?
2020年10月、日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする宣言をしました。 カーボンニュートラルとは、排出される温室効果ガスと吸収される温室効果ガスの量を均衡させることで、実質的にゼロにすることです。
PLAは植物由来のバイオマスプラスチックであるため、生産から焼却まで大気中のCO2を循環利用することでカーボンニュートラルを実現しています。
PLAが期待されている背景は?
①地球温暖化問題
2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)に始まり、私たちは一つひとつの行動が”社会や地球規模で持続可能かどうか”を意識して生活する様になりました。
また、企業もその事業活動において地球全体の持続可能性に貢献することをより厳しく評価される様になっています。
持続可能性を考える中でも、環境分野において特に問題視されているのが温室効果ガスによる地球温暖化問題です。
そのほとんどが石油から作られているプラスチックは、燃焼するとCO2が大気に放出され地球温暖化を通じて様々な気候変動問題を引き起こす可能性が示唆されています。
世界各地で異常気象が多発したり、お米などの涼しい気候に依存している食料の収穫が難しくなって食糧危機を招いたり、珊瑚礁の70~90%が消滅するなど生態系にも重大な影響を及ぼすことが懸念されています。
このような中でトウモロコシやジャガイモからできるPLAは、大気中のCO2を循環利用(カーボンニュートラル)しており、大気中に新たにCO2を排出しないプラスチックとして注目されています。
②ゴミ問題
多くのプラスチック素材は自然に残された場合永久に分解されませんが、PLAは生分解性を持っており、適切な温度と湿度の自然環境下で分解が可能です。
この特性を活かして農業用製品も開発されています。農業では様々なプラスチック資材が使われますが、完全に回収することが困難でであるため、自然に還る農業用フィルムに需要があります。
PLAなどの生分解性プラスチックによる農業用フィルムを使用することにより、労働時間の短縮やゴミの削減などのメリットが見込めます。
※農業用フィルムは一定の時間で分解されるよう調整されておりますが、PLA製品を不法投棄等は絶対にしないでください。
特にPLAは海では分解されません。他のプラスチックと同様に焼却処理するだけでもカーボンニュートラルですので十分持続可能な活動となります。
PLAフィラメントはどんな特徴があるの?
造形が最もスムース
PLAは積層式3Dプリントにおいて最も造形のしやすい材料として知られています。
造形材料にPLAを使うメリット・デメリットとして主要なものを見ていきましょう。
造形材料にPLAを使うメリット
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1安価に入手しやすい
PLAは比較的新しい素材ですが、近年の生産体制の発達によって安価に入手しやすい素材になっています。
フィラメントの価格で見ると、ABSやPET-Gと並び手に取りやすい素材です。 -
2高速造形が可能
PLAは比較的低い印刷温度で安定して溶け、積層プリントヘッドから均一に押し出されるため、安定した造形が可能となります。
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3低い収縮率
ABSや他の造形材料を使って造形をしたことがある方は実感したことがあると思います。
PLAは冷却時に比較的低い収縮率を持っています。言い換えると反りが少なく綺麗に印刷できる素材です。 -
4ほとんど臭いがない
特に自宅で積層式3Dプリンタを使う際は気になる方が多いのではないでしょうか。
PLAは他の素材と比べて印刷中の臭気が少ないです。
造形材料にPLAを使うデメリット
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1熱に弱い
PLAの耐熱温度は約60〜65°Cです。以前ドライヤーフックを造形したことがあるのですが、一日で変形して使えなくなってしまいました。
ABSの耐熱温度が約80〜105°C、TPUは約120〜130°Cであることを踏まえると、PLAの耐熱温度が低いことがわかります。 -
2割れやすい
PLAは硬く、衝撃に対して割れやすい性質があります。特に3Dプリント物に関しては積層面に対して並行に割れやすいので注意が必要です。
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3研磨しにくい
PLAは硬い性質を持つため、他の樹脂と比べて研磨されにくいです。
※研磨剤等との相性は悪くないことが多いため、工夫次第で研磨しやすくなるでしょう -
4吸湿しやすい
PLAは吸湿しやすい素材です。PLAフィラメントが吸湿してしまうと、物性が変わってしまったり、 発泡や糸引きなど印刷時のトラブルが起こりやすくなります。
※ABSも同程度の吸湿性を持ちます。
SMOOOTHがPLAフィラメントを開発する理由
SMOOOTH(スムース)は、PLAフィラメントを中心としてバイオマスプラスチックを用いたフィラメントを開発しております。
なぜその他のABSやPET-G、 TPUなどの積層式3Dプリンタでよく使われる素材を開発しないのかというと、バイオマスプラスチックを普及することに意味があると考えているからです。
もちろん、ABSやTPUと比べるとPLAフィラメントは熱に弱く、硬度があるため割れやすいという性質を持っていますが、SMOOOTHは様々な物性付与を研究することでそれらを部分的に解消し、他の素材に負けない強みを持った新しいフィラメントへと進化させます。
私たち消費者は通常、企業から販売されているプラスチック製品を目的に応じて選び使っています。
使っているプラスチック製品についてどのような種類のプラスチックが使用されているのか知らないことがほとんどでしょう。
ところが、3Dプリンタを使う際にはどんなプラスチックを使うのか、私たち消費者が自主的に選ぶことができます。
消費者がもっと素材に関心を持ち選ぶ目を持つようになれば、世界はよりSMOOOTHに、循環型社会へと移行することができると信じています。
今後もバイオマスプラスチックの新しい価値を見出し、循環型社会と3Dプリンタ技術の発展に貢献していきます。
参考
- 北本宏子「野菜の生産に生分解性プラスチック製農業資材を使い,労力とゴミを減らす」農研機構
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/58/8/58_580810/_pdf - 「カーボンニュートラルとは」環境省
https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/about/